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精神保健指定医と措置入院の裏側

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みなさん、こんばんは。
あっという間にもう9月ですね~。

8月はリオオリンピックに感動し、芸能ニュースに仰天し、
本当にめまぐるしく過ぎて行きましたが、
ほとんどの人は相模原障害者施設殺傷事件 (←リンクあり)を忘れていませんか?

この事件の重要なところは、私の過去のブログで書いたこともありますが、
精神科病院の措置入院 (←リンクあり)の解除の仕方に大きな問題があり、
これについては何度か問題になっていたにも関わらず、放置されていた点です。

どの記事だったか探すのが手間なので、暇な人は探してみてください。

措置入院とはいわゆる自傷他害の恐れがある精神障害者を法的に強制的に
入院させるという入院形態のひとつです。

精神科が特殊であるのは、こうした国家による強制的な入院があることです。
その他、半強制的な医療保護入院というのもあります。
これは、本人の同意を得られなくても、精神保健指定 1名が診察し、
入院が必要と判断し、かつ保護義務者(未成年の場合は両親とも、
夫婦の場合は配偶者、その他家族で家庭裁判所の選任を受けた者、
家族がいない場合は市町村長)の同意のもと、行う入院です。

これらに対して、本人の同意のもとの入院は任意入院と呼ばれます。

通常、入院は本人の意思によるもので、たとえ癌だろうと、
本人が治療を拒否すれば、強制的に治療を受けさせることはできません。

しかし精神疾患によってきちんとした判断能力が非常に乏しく、
かつ自傷他害のおそれのある場合は強制的な入院をさせることができるのです。

措置入院については、そのほとんどが他害のおそれが切迫しているか、
あるいは既に犯罪を犯しているが、それが精神疾患の悪化によるものであり、
精神疾患の治療が最優先される場合です。

過去に私が診た患者は、詐病、いわゆる精神病の振りをして、措置入院になり、
国民の税金で賄われるこの入院で3食事昼寝付きの入院生活を手に入れ、
ご丁寧にもケースワーカーのお陰で生活保護までもらって退院しました。

詐病であることはわかっているのに「お困りでしょうから」と入院させた当時の院長は、
まだ精神科医になって3~4年程度の私にその患者を丸投げし、
退院も当時まだ精神保健指定医でなくてはならないということはなく、
経験の浅い私が一人で決定しなければならなかったことは、以前にも書きました。

法的に強制入院させるのに、退院は私一人の責任となることは疑問でした。

しかし、このように患者の経済的な理由から、無理やり措置入院へと持って行くことが、
以前は精神科病院では結構あったのではないでしょうか。
もしかすると今でもそうかもしれません。

ではなぜ措置入院にしたがるのか?

それは国が費用を出すので入院費の取りっぱぐれがない、ということが一つあります。
入院費用を踏み倒したり、滞納したりする患者がいるからです。

もう一つの理由は、精神保健指定医 (←リンクあり)になるためのケースレポートに
統合失調症の措置入院の症例が必須だからです。

精神保健指定医のことを書こうと思ったらちょうどリアルタイムに
なんとあの相模原障害者施設殺傷事件の犯人の措置入院に関わった医師が
精神保健指定医を不正に取得している可能性があるというニュースが載っていました。

精神保健指定医100人不正疑い 「相模原」判断医師も…診療歴偽り取得か
(↑リンクあり)

そもそも精神保健指定医とは、人権を擁護するための国家資格です。
医師免許という国家資格を持ち、かつ精神科に従事し、5年以上の実務経験を有し、
国が定める精神疾患について、自分が主治医として治療に携わった症例を8つ、
ケースレポートとして提出し、すべてのレポートが合格すれば、正式に合格となります。

精神保健指定医の資格の不正取得については以前から言われていたもので、
私からしたら「いまさらやっとか」という感じなのですが、
私が以前働いていた姫路の病院でこの資格を取得した当時は、
審査が急に厳しくなった時期でもあり、一発合格が受験者の3分の1、
次の受験日までにケースレポート2つまでのやり直しで済むという
「保留」と呼ばれる奇妙な不合格が3分の1、
レポートの書き直しでは済まない程度の不合格が3分の1の割合でした。

今ではもっと合格率が高いようですが、この頃は精神保健指定が不足していたのに、
精神保健指定医の資格取得が厳しかったという時期でした。

そしてなんと私と同時に受験した医師が保留の不合格だったため、
私は合格したのに素直に喜べないどころか、
それ以来その医師から目の敵にされるようになりました。

合格したその日から精神保健指定医の仕事はできるので、明暗がくっきりと分かれ、
彼にとってはそれは屈辱だったのかもしれませんが、要は自分の力量不足なのです。

しかも、その後、自分の下で働いている医師が不合格になったという事実と
今後もこんなことがあるのではないかと脅えた院長が、
なんとその不合格だった医師の修正レポートはもちろん、
翌年から精神保健指定医のケースレポートを詳細に手直しし始め、
出来上がったレポートはもはや「院長のレポート」と化していました。

これは由々しき問題で、絶対にやってはいけないことではないのでしょうか。

不合格になったのにはそれなりの理由があるのであり、それは彼自身が考えるべきで、
院長の見栄のために合格させるということが優先されるなんてとんでもないことです。

親が子どもの夏休みの宿題をするレベルとはわけが違うのです。
国家資格を得るためのレポートは自分自身で理解して書き上げなくてはなりません。
精神科医として最低限の良心の部分ではないのでしょうか?

私は再三にわたり、こうした行為を止めるように院長に苦言を呈しましたが無駄でした。

3~4年もすると、こうした院長の行為が大学病院でも噂になっていたのか、
新しく来た医師は「僕はそれ目当てでここを希望しました」などと言っていて、
「はぁ~、もうこんなことを堂々と言う奴が精神科医だなんて世も末だ」と思いました。
が、なんと彼は院長の書いたレポートで不合格になったのでした。

私はいろいろと耐えきれないことが多く、その病院を辞めましたが、
今でも院長は健在なので、懲りもせずにやっているかもしれません。
悪質な不正ではないにしろ、やってはいけないことだと今でも思います。

放置された指定医の暴走 (←リンクあり)は比較的よく取材されていると思います。

現実がこんなことだなんて、本当は私はもうずっとずっと前から現場でイヤというほど見て
知っていたことだし、それを止める術もなく、忸怩たる思いで見ていたのです。

話が指定医に逸れてしまいましたが、相模原事件のことはまた次回に書きたいと思います。

世の中には光があるところ、必ず影もあります。
表向きのことと、その裏側の実態・・・。
悲しいけれどそれが現実なのです。
それでも、影や陰に呑み込まれる人がどんなに多くても、
逆に影があるところには必ず光があることを信じて生きる人もいます。
みなさんはどちらでしょう?

それではみなさま、良い一週間を。

では今日はゆずの「表裏一体」を贈ります♪

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