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クライマーズハイ

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みなさん、こんばんは♪
お盆休みも最後になりましたね。今週末はからりとして過ごしやすいですね。
来週にはまた台風が近づくようですが・・・。

さて、今日は個人ブログに書いていたブログをほぼそのまま引用する形ですが、
(もともと私の個人ブログは映画好きが高じて始めたものです)
横山秀夫の「クライマーズハイ」を取り上げてみたいと思います。

8月12日は、1985年、御巣鷹山は日航のジャンボ機123便が墜落した
未曾有の航空機事故があった日です。
今でもご遺族が慰霊登山に御巣鷹山に登る姿が毎年テレビのニュースで流されます。
しかし事故からすでに30年以上経った現在、御巣鷹山の慰霊登山は
遺族の高齢化に伴って厳しいものになっています。

この単独航空機の事故としては世界最大級の事故を題材に描かれた小説は
いくつかありますが、山崎豊子の「沈まぬ太陽 」と
横山秀夫の「クライマーズハイ 」を代表として挙げられるでしょう。

山崎豊子の方は日航という会社の体質を焦点に、
横山秀夫は事故についての新聞報道についてを焦点に、
全く別の視点で描かれています。

しかし私はなんとなく個人的に物議をかもした山崎豊子の「沈まぬ太陽 」を
読む気にはなれず、読んでいません。

「クライマーズハイ」は事故後20年を経た2005年、
佐藤浩市主演でNHKでドラマ化され、2夜にわたって放映されました。
その後2007年堤真一主演で映画化され、翌2008年に公開されています。
両方を観比べた感じでは、NHK制作ドラマの佐藤浩市の方が、
苦悩する主人公をよりリアルに演じれているのかなという感じです。

物語は突然起きた未曾有の航空機事故の全権デスクに任命され、
群馬の地元紙北関東新聞という看板を背負いつつも、
事故のあまりの大きさに戸惑い、どこかで「もらい事故」としてしか捉えられない
主人公の悠木が、地元紙を買いに来た親子を見て新聞報道のあり方に悩み、
新聞社という複雑な組織の中で足元をすくわれたり、大きな決断ができずに
目の前のスクープを落としたり、翻弄されつつも
人生の大きな決断をしてゆく姿を描いています。

横山秀夫 は実際に事故当時、墜落現場となった地元群馬の
上毛新聞の記者であり、取材を体験しただけに、その臨場感は迫力があります。
読んでゆくにつれ、悠木に感情移入してゆく自分がいました。
悠木と共に、新聞社の組織内の確執や
いつまでも過去の名声にしがみつく上層部との対立に怒り、嘆きつつ、
一方で悠木自身の不器用さにイライラしたりもします。

こうした、まさに報道の嵐というよりも大型台風とも言える1週間を描きつつ、
合間に亡き友人の息子と衝立山に登る場面が描かれ、
過去と現在がうまく交錯しています。

最後には息子との絆を取り戻したい彼にとって、胸の熱くなるような場面もあり、
読み応えのある一冊といえます。

私が横山秀夫 を読みふけったのは、WOWOWのドラマWで「震度ゼロ 」が放送され、
それが面白かったために原作本を読んでみようと思い立って購入したことから始まります。

その後「陰の季節 」「深追い 」「第三の時効 」「臨場 」「影踏み 」「看守眼 」などの
警察小説を読みふけり、「半落ち 」ではその斬新な物語の手法に魅せられました。

なかでも「半落ち 」の最後は涙なくしては読めません。
映画の方を先に観ていたのですが、原作本の構成や手法の斬新さ、面白さには
本当に驚きました。警察小説というジャンルを読んだのもほとんど初めてでした。
また、映画での柴田恭平や寺尾聡の渋い演技も光ってました。

なお、各種ランキングで1位になり、直木賞候補になったこの作品に対して、
直木賞選考委員の林真理子が「欠陥のある作品」として業界も読者も批判したことで、
横山秀夫は直木賞と決別宣言するわけですが、どこの業界にも
権威に乗っかって驕っている人はいるものですね。困ったものです。

それでも横山秀夫の作品の多くはドラマ化、映画化されており、
それはやはり面白いから以外のなにものでもありません。

最近だと「64(ロクヨン)」が、やはり佐藤浩市主演で映画化されています。
小説を読んでから映画を観ましたが、どちらも面白かったです。
余談ですが、三浦友和っていい役者になりましたね。

さて、新聞記者という仕事も考えてみればすごい緊張を強いられる職業ですね。
まぁどの組織も大変なのだなぁと思いますが・・・。
新聞はいわゆる週刊誌とは違います。
当時フライデーやフォーカスなどのいわゆる写真週刊誌が、
他人の人権を全く無視してあらゆる写真を載せたことについては
(特に日航機事故の現場など)やはり報道のあり方を深く考えさせられました。

小説の中にも出てきますが、凄惨な事故現場にズカズカと土足で踏み込み、
お金になるといわんばかりにパシャパシャと写真を撮り、
挙句は現場で「記念品(現場にあった物品)」まで持ち帰って
それを「話のタネ」にした人間が確かにいるという事実もまた消せません。

それでも、あの事故で奇跡的に生存者がいて、
女の子が自衛隊に救われる場面はみんなが歓喜した瞬間でした。
また現場に残されたメモ書きされた遺書など、やはり涙なくては聞けないニュースでした。

報道のあり方、報道する側、それを受け止める側のあり方について
考えさせられる小説でした。この夏、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

元記事 心療内科医まき@梅田

では今日は今CMに使われているフジファブリックの「若者のすべて」を贈ります♪
難しい言葉は一切使っていないのに、奥深くてしみじみさせられる曲です。
ミスチルの桜井や槇原敬之もカバーしていて、それもいい感じです。

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