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大人のADHD~コンサータとストラテラ~

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みなさん、こんばんは。
まだ梅雨明けしていないのに、真夏のような暑さですね・・・。
熱中症などに気を付けて、水分補給をこまめになさってくださいね。

先日は久々の休診日。休診日でも何かしら予定が入ってるのですが、
本当にオフの日でした。というわけでちょっと断舎利的にお掃除。

お掃除と言えば、なかなか片づけられないのがADHDの人たちです。
片づけようと思うのですが、片づけている最中にふと目に留まったモノに
興味が移行してしまって進まなかったり、段取りが苦手なので
とりあえず広げてしまったりして、余計散らかす場合もしばしばです。

まきメンタルクリニックでは大人のADHDの方が結構来られます。
ADHDとは注意欠陥多動障害のことです。
発達の問題ですから、当然子どもの頃からなんらかの症状はあります。
それに関しては過去記事を参照してください。

ADHD~大人の発達障害~(←過去記事リンク)

ではなぜ今、大人の発達障害(特にADHD)が問題になっているのでしょう?

よくあるのは、子どもの頃は周りの大人(特に母親など)が
カバーするように動いてしまうということもありますし、
多少のことは「愛嬌」で済まされていたということもあります。

不注意によるうっかりミスや、遅刻などは学生時代には大目に見られても、
成人して社会人になったら大目に見てはもらえません。
書類のちょっとした数字が一桁間違ったりしていても、大変なことです。
社会人になってからは当然強く注意されることになります。
たるんでいる、やる気があるのか?など。

ADHDの人たちにやる気がないわけではありません。
むしろ社会参加へのモチベーションは高いのに、空回りしたり、
逆効果になってしまったりした結果、自尊心が傷ついている場合が多いのです。

「普通はね・・・」などと注意され続けると何が普通かわからなくなり、
一生懸命やっているのにできない自分に落ち込み、
一度にたくさんの用事を言われるとパンクしそうになり、
優先順位をつけたりうまく段取りをすることが苦手なので混乱し、
話の途中でわかったつもりになって先走ってしまって失敗したりするうちに、
二次障害と呼ばれる不安障害やうつ状態などの併存疾患が生じてくるからです。

ADHDの治療は内服が主になりますが、
お薬さえ飲めば夢のように改善するということはありません。
たとえば目が悪かった人がメガネやコンタクトで視力矯正するような感じです。

現在日本での処方薬としては、ストラテラとコンサータの2種類があります。
どちらもそれなりに薬価は高いお薬ですが、効能は微妙に違います。

ざっくり言うと・・・
ストラテラは若干度の緩いコンタクトを24時間しているようなお薬。
コンサータはそこそこ見えるメガネを日中だけかけているようなお薬です。

ストラテラは初期量から徐々に増量していき、
十分な効果発現までに2ヵ月程度かかる場合もあります。
しかし一日を通して穏やかに効果があるという点では優れています。
朝起床時から眠るまで平均して効果があるとされていますが、
効果を安定させるために1日2回~3回に分けて服用するのが望ましいです。

特にADHDの衝動性を和らげてくれるという点では、
コンサータより優れているという印象です。

ストラテラを内服し始めた女性患者さんたちから、
「子供に衝動的に怒る回数が断然減ったので嬉しい」
「以前は彼氏と喧嘩してすぐカッとしていたのが、落ち着いて話せるようになった」
という声を聞きます。

一方コンサータも初期量から徐々に増量していきますが、
効果発現が比較的早く、必要な用量になれば、はっきりと効果がわかります。
朝1回のみの内服なので、飲み忘れが少ないというメリットがありますが、
起床直後にも日中と同様の効果があるということはありません。
また内服の時間が遅れると、夜の睡眠を妨げる可能性もあります。

しかし日中の集中力を高めるという点ではストラテラより優れているという印象です。

患者さんからは、
「長い会議でも集中して聞くことができた」
「以前より仕事がはかどるので、やれるという自信が出てきた」
という声を聞きます。

じゃあ、どちらも併用すればいいじゃないかという考えもあるでしょうが、
どちらか自分に合っている方の薬だけで十分だと思います。
それ以外の部分は、心理教育など精神療法で十分だと思うので、
安易に両方の薬を使うというのは、長期的に考えると賛成できません。

心理教育の部分で言えば、イーライリリーの資料が非常に役立ちます。
朝・日中・夜・一日を通してという項目で自分の生活を簡単にチェックできる
QADというチェックシートがあり、患者さんには最初は週に2回程度、
ある程度したら週に1回チェックして来てもらい、その情報を見ながら、
どこが出来ていて、どこをもう少し工夫すべきかなどを話し合います。

当院ではそのチェックシートを患者さんがパソコンで作り直してくれたりして、
非常にきれいなチェックシートを作成してくれました。
そのデータをいただいて、プリントアウトして患者さんにお渡ししています。

余談ですが、ADHDの人は凝り性の一面もあり、ある程度マイペースでできる
SEなどIT関係の仕事に就いていることもよくあります。
パソコンなどが得意なので、知らず知らずに特性を活かしていると言えます。

ADHDの患者さんはなかなか集中できない一方で、過集中の傾向もあります。
たとえば夜、早く寝ないといけないと頭ではわかっているのに、
ついついゲームに夢中になってやめられずに夜更かししてしまう。
こうしたことは誰でもありますが、ADHDの患者さんは特にこの傾向が強いのです。
集中し始めると没頭して時間も忘れ夜更かししたりした結果、朝が起きにくかったり、
何かに集中してそれを止められずに約束の時間に遅刻したりします。

また問診では必ず子供時代や学生時代のことを聞いていますが、
宿題になかなか取りかかれない。夏休みなどは顕著です。
特に自由研究などは夏休みの終わりになって慌てて徹夜したりなど、
問診するとたいていこれらにあてはまります。

過集中と先延ばしの癖。これらは一見別物のようですが、深く関連しています。
つまりエンジンがかかるのが遅いのですが、一度エンジンがかかると、
今度は適度にブレーキを踏むことができず、ブレーキの効きも悪い状態です。

このように、ADHDの患者さんは、取りかかるのも遅いのですが、
一つのタスクから別のタスクへとスムーズに移動できない傾向があります。
さらに別のタスクに移動すると、前のタスクのことが抜けてしまうなど。
ストラテラやコンサータはこうしたタスクからタスクへのスムーズな移動を
助けてくれるという側面もあります。

まきメンタルクリニックでは、こうしたお薬の説明を十分行った上で、
自分のライフサイクルや特性を考えてどちらかのお薬を選んでいただきます。

コンサータを選んだから絶対コンサータを続けるということではなく、
自分に合わないかもしれないと思った場合にはストラテラに変薬して、
2種類の薬を飲み比べていただくこともあります。
ストラテラからコンサータに変えたけれど、やはりストラテラの方がいいとか、
その逆の場合もありますから、どちらが自分に合うのか試行錯誤も必要です。

一番してはいけないのは、2種類同時に始めることでしょうか。
個人的にはコンタクトと眼鏡を同時にしているような感じです。
絶対にどちらかにしなさいというのではありませんが、
いきなり2種類を同時に始めると、副作用が出たときにどちらの薬の副作用か
わからないということになりますし、薬は本来少ないほど良いと思います。

★初診に入る前にしっかりした問診による診断や、今後使える社会資源など
 十分な説明と疾患の理解を得た上で治療に入っていただくために、
 医療相談をお勧めしています。

では今日は、最近運転中によく聴いているミスチルの「渇いたキス」を贈ります♪

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