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「風に立つライオン」~誰のための医療か?~

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みなさん、こんばんは。
今日も大阪は30度を超す暑さで、蒸し暑かったですね。

さて今日はさだまさしの「風に立つライオン」をご紹介したいと思います。

物語は、2011年、東日本大震災後、ケニアから来た
ミケランジェロ・コイチロ・ンドゥングという医師が
東北を訪れるところから始まります。

シュバイツアーに憧れて医師になった島田航一郎。
彼ががケニアのナクール熱帯医学研究所に赴任。
彼はなんでも「オッケー、ダイジョブ」と安請け合いする、非常に腕のいい外科医。

彼はそこからロキチョキオという町の戦場外科病院(赤十字病院)に赴任して、
そこで心を閉ざしてしまった負傷した少年、ンドゥングと出会います。

戦争は非常ですね。子供を使って歩かせて地雷を探したり、
小さな子供でも銃を持って人を撃ったりする。そういうことが当たり前の国での医療。
航一郎を待っていたものは、赤十字病院に運び込まれる重症の少年兵たちの姿でした。
あるものは身体の一部を失い、あるものは「心」を失い・・・。

彼らをすくうため、航一郎は、
最初はちょっとギクシャクしていた看護師の草野和歌子とともに、
人命救助だけではなく、戦争孤児たちの学校も作っていきます。

実は航一郎には日本に残してきた秋島貴子という女医の恋人がいました。
しかし彼女は小さな島のたった一つしかない診療所の娘。
航一郎に「一緒にアフリカに行ってくれないか?」と言われ、
嬉しいのに、診療所に来る患者さんたちのことを考えると
即答できない彼女を残し、一人でケニアに。

物語はいろいろな人の回想という形で進行していきます。

なせンドゥングが医師になって日本にやって来たのか。
そして彼が日本で出会う、震災後の避難所の中で、明るく生きぬく人々。

作者のさだまさしは、大沢たかおに頼まれて、歌を小説にするにあたり、
かなりの時間を要し、「もう書けません」と大沢たかおに何度も言おうと思ったようです。

小説として医療の現場をしっかり描けていると思います。

ところどころ抜粋して、現在のいわゆる金儲けしか考えていない医師や
盲目的に薬を飲んで依存してしまう患者さんに読ませてあげたいくらいです。

以下、かっこ内は小説からの抜粋です。

「セカンドオピニオンってのがようやく当たり前になりつつあるけど、これもねぇ・・・
駄目な医者からもっと駄目な医者にリレーしたんじゃもっと悪いだろ?」

本当にそうなんですよね。
本来セカンドオピニオンっていうのは、そもそものその人の症状から
本当にその病名であっているのか?治療は正しいのか?
他の選択肢はどれくらいあるのか?そういうことをしっかりと聞くことなのです。

まきメンタルクリニック では医療相談という形でセカンドオピニオンも
受け付けていますが、保険外診療なのでそれに応じた料金が発生します。
大きな病院だと適当に意見を言って、それが20分程度でも1万円とかします。
当院では簡単な検査込みでしっかり30分聞いてこちらの診たてや説明もして、
8000円になっていますが、それが高いと思う人は来なくていいのです。

よく見かけるのは、そもそも躁うつ病でもないのに、
「なかなか治らないうつは躁うつ病だ」などと言われて、
リチウムだのバルプロ酸だのを投与され、一向に治っていないケース。

薬が多すぎて、逆に抗うつ剤で、躁うつ病になってしまったケース。

診たてが間違っていれば、そしてまったく精神療法をしなければ、
治るものも治りませんよね。

「一番大切なことは自分の力量と領分をきちんと理解する、ということなのです。
できもしない治療に挑んだり、
分からないのに分かったふりをすることが最も危険なのです。
分からないことは『分からない』と言える勇気が要ります。
医師は私だけなのです。私が間違えるということは、人の命を間違えることだからです」

航一郎の恋人の秋島貴子がこう語る場面もまた印象的でした。

これはとても大切なことです。
なんでも診れると豪語する医師は、自分を知らない医師です。
私が精神科医であっても、拒食症などはどうしようもできないのでお断りしています。

きちんとできることがあるから、できないことも「できない」と言えます。
「できない」ということは、別に恥ずかしいことではありません。

山のような薬漬けになった患者さんの減薬に対しても、私ははっきりと伝えています。
減薬に伴う離脱症状を緩和することはできますが、なんの苦痛もなく減薬は無理です。
その覚悟をしてから来てくださいと伝えています。

なんでもできるようなことを言う医師は、引っ込みがつかなくなって、
結局は薬漬けにしたりして、治療をしているのか、
薬依存を作り出しているのかわかりません。

だれのための医療なのかを、医師、患者、双方が、真摯に考えてほしいと思います。

この小説は、少年たちの身体を治しながら、心も治してゆく、
そういうことが自然とできる航一郎という医師の姿を描いています。
そして航一郎が撒いた種が、ンドゥングへ、
そしてまた日本の子供へとつながっていきます。

実在した長崎大学の柴田紘一郎という医師がモデルになっているそうです。
医療を壮大な視野で考えられる、こういう医師が日本にいたことは日本人の誇りですね。

ただ、映画化された「風に立つライオン」は、監督が三池崇史なので若干気がかりでしたが、
案の定、ケニアで奮闘する航一郎が、日本に残して来た恋人へ手紙を書くということに
こだわりすぎて、小説の後半の素晴らしい部分が全く描かれておらず、
映画しか観ていない人にはどうかわかりませんが、ガッカリ感を免れませんでした。
一緒にいった、小説を貸してくれた友人とも「あ~あ」とため息をついてしまいました。

ぜひ小説の方をお勧めしたい作品です。

では今日は作者のさだまさしの「つゆのあとさき」を贈ります♪

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