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精神神経学会で発表してきました ~ in 大阪 ~

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みなさん、おはようございます。
昨日の土曜日、精神神経学会で発表して来ました。

今年はクリニックのすぐ近くの大阪市中之島の国際会議場で精神神経学会がありました。
そのため、4日と5日は、午前中は学会、夕方戻ってからクリニックで診察という、
ちょっとタイトなスケジュールでしたが、6日に無事、自分の発表を終えました。

いつも書いていますが、私は自分が勉強を怠らないように、
学会での発表を自分に義務付けています。

最低でも年に1回。地方学会ではなく全国レベルの学会で。
今年は広島での不安症学会にはじまり、東洋心身医学会、今回の精神神経学会、
そして7月のうつ病学会と、4回発表するのでちょっと頑張りすぎたかなと思いますが、
私が勉強を怠ると、それは即、患者さんに跳ね返ってしまうのです。

今回は、主に犯罪被害者の支援について、重点的に聴講してきました。
というのも、私自身の発表も、犯罪や事故などによるPTSD(心的外傷後トラウマ障害)
についてのものだったからです。

PTSDとはまず生命を脅かされるような出来事ありき、なので、
マイナーな交通事故や諍いなどは含まれません。
簡単にPTSDと診断することは、法的側面からも問題となります。

今回は特に、性犯罪被害者の治療の第一人者である、小西聖子先生と
少しだけですが、個人的にお話させていただけたので、とても勉強になりました。

また触法少年への対応などのセッションもあり、それも聴講して来ました。
いわゆる、少年法で守られた少年少女たちが、犯罪を起こす裏には、
複雑な家庭環境や虐待などがあることは理解はできます。
また発達の問題も当然含まれているでしょう。それも理解できます。

でも、だから人に危害を加えていいのか?犯罪を犯してもいいのか?
私は、それについてはとても疑問です。

今回、あるセッションで、「犯罪を犯した少年(あるいは少女)が頼りない、とか
家族が力に彼らの力になれないという場合は、
障害者手帳の診断書を書いてあげてください。
そして、何かあれば精神科の先生方が力になってあげてください」
という発言を聞いて、強い違和感を持ってしまいました。

精神障害者手帳ってそういうために診断書を書いてもらって
取得するものじゃないと思うからです。
もちろん、発達障害で日常生活にある程度の支障を来す場合とか、
あきらかに精神疾患である場合は、必要でしょう。
発達の問題が大きい場合は「療育手帳」をもらえます。

以前、私は警察の手から逃れるために、
幻聴が聞こえるふりをした人を診たことがあります。
それが詐病(病気のふりをすること)だということは、すぐにわかりました。
私はもちろんそんな人は警察に行くべきだと思いましたし、
入院の意味はないと思いました。

しかし当時の私は、まだ精神保健指定医の資格がなく、
措置入院(精神保健指定医2名が診察し、自傷他害のおそれがある精神疾患である
という診断を2名の医師が揃って下した場合、本人の意志とは関係なく、
国が医療費の全額を税金で賄い、強制入院させる入院です)の鑑定の資格がなかったため、
勤務先の院長の「お困りでしょうから」というひと言で、
その人は措置入院となりました。
ただの犯罪者をなぜ税金で・・・という想いは強かったです。

私が担当医に任命され、その人を日々診察しましたが、
やはり詐病としか思えませんでした。
でもその人は入院中に生活保護を受け、手厚い待遇を受けたわけですが、
少しでも気にいらないことがあると、職員に暴言を吐き、私にも暴言を吐きました。

私は、可能な限り短期間で措置を解除し、病院から退院させました。
措置の解除が、当時、医師になってまだ経験も浅い私の判断のみにゆだねられることにも、
とても強い違和感がありました。法的に強制入院させておいて、その退院に対して、
司法は何の責任も取らないというスタンスだからです。

一度入院すれば「精神科病院に入院歴あり」となり、警察もなかなか手が出せないのです。

大阪池田小学校児童殺傷事件の宅間被告がそうでした。
何度も「統合失調症」という病名がつけられ、措置入院を繰り返し、
外に出ては犯罪を重ね、「俺は犯罪を犯しても罪に問われない」とうそぶいていました。

ちゃんとした医師が、どこかで「詐病だ」とはっきりと言えば、
あの事件は防げたかもしれません。

結局、宅間被告は「統合失調症ではなく、責任能力あり」と鑑定されましたが、
事件が起きてからやっとその鑑定がなされたのです。

何度も措置鑑定はなされていたはずなのに・・・。

とにかくその人を退院させる時、私は、たった一人で決断しなくてはなりませんでした。
入院を命じた院長も知らんぷりなのです。

後日、その人はまた犯罪を犯しました。
警察からの文書での問い合わせに、私ははっきりと「詐病である」と回答しました。
通常、警察からはなんの連絡もないものですが、珍しくその人の時には、
警察から私に連絡が入りました。
「先生の回答書のお陰で、本人が自分で詐病だと認めました。助かりました」と。

少年少女たちの将来には更生の余地があります。
ただ、犯罪を犯したことは事実です。

どのような背景であれ、必要であれば必要な医療を提供すればいいことで、
過剰な医療の提供をする必要はありません。

犯罪を犯した少年少女たちに、大人が勝手な思い込みで「可哀想な生い立ち」を理由に
過剰に優遇する必要があるのでしょうか?
被害にあった人の人権はどうなのでしょうか?

被害者感情には一切触れていないこの発言に、私はかなり引いてしまいました。

精神障害者手帳を申請する以上、きちんと通院し、
本人がなんとかなろうという意志が、何より優先されるべきではないかと思います。

精神障害手帳を取得することで、社会的資源の活用はしやすくなるし、
さまざまなメリットも確かに多いのです。

居住している市町村によって異なりますが、大阪市だと、市バスが無料だとか、
映画がいつでも1100円だとか、いろいろな施設で割引があるとかです。

本当に精神疾患である場合は大いに活用してほしいと思います。
しかし「本人が頼りないから」とか「家族がちょっと頼りないから」といって、
通院もしていない人にそのような手帳を取得する診断書を書く必要があるのでしょうか?
困った時だけ通院されても、こちらだって対応に困ります。

少年法を楯にする人は、果たして自分の家族が被害にあっても、
同じ発言ができるのでしょうか?

私は犯罪の被害者も診ています。
彼らがいかに苦しみ、悪夢にうなされ、どんな想いで心療内科にたどり着いたのか?
彼らにとって、心療内科の敷居が如何に高いか?

そういうことを知っているからこそ、
安易に「はい、そうですね、協力しましょう」とは簡単には言うことができません。

人はなかなか公平な立場ではいられません。
それでもどちらかに過剰に偏ることなく、中立でありたいとは思っています。

このことに関して、それぞれの立場でそれぞれの言い分があるでしょう。
みなさんが一度考えてくださるきっかけになればと願います。

では今日は、ドラマ「アルジャーノンに花束を」でエンディング曲となっている
ベッドミドラーの癒しの歌声「ローズ」を贈ります。

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