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漢方薬について ~週刊新潮の言い分は本当か?~

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みなさん、こんばんは。
3連休に狙ったように台風が・・・。
強風域に入る前から結構強い風が吹いてますね。
とはいえ別にどこかに出かける予定もないのでいいのですが。

例によってベルソムラやエビリファイの講演が重なり、
バタバタしてまたまたブログがおろそかにあせる

先日ある患者さんに、「先生、週刊新潮にツムラの漢方の大嘘とか、
えらい紙面とって書いてありましたけど、読みましたか?」と聞かれました。
私は全然知らなかったので、「え?なんのこと?」という感じでしたが・・・。
「先生も文春ばかり読んでないで、新潮も読んでくださいよ」って、
いやいや、「文春」も特に興味ないから読んでないけど。

ツムラの漢方は、定期的にバッシングされます。
診療報酬改定の度に「漢方薬を保険適応からはずせ!」と息巻く医師もいますし。

いつもブログに書いているように、私は決して漢方信者ではありません。
「漢方=身体に優しく絶対安全」というわけでもありません。

妊婦に出してはいけないモノもあれば、
「甘草」のように用量に注意しなくてはならないものも。

「週刊新潮」をさらっと立ち読みしましたが、
一部極端な例を挙げて、「死亡例もある!」とか書くと
ショッキングかつセンセーショナルなので、ギョッとしますが、
副作用の全くない薬など存在しません。
もちろん、漢方薬にも副作用はあります。
しかし生薬なので、例えば紫蘇とか、ミカンの皮とか、生姜とか、
日常生活に根差した成分も多いので、身体にはやはり優しいことが多く、
むしろ西洋薬の方が重篤な副作用が多いと思うのですが。

とは言え、新潮の書いていることに賛同できる部分もあります。
医師なら誰でも漢方を処方できるということです。
極端な話、全く漢方の知識がない医師が適当に出すこともあります。
さらに言えば、市販薬として薬局で売られていますよね。

過去記事はこちら
漢方の市販薬(OTC)について  ←リンクあり。

漢方に限らず、薬についてろくに勉強していないのに処方する医師がいて、
どういうつもりで処方しているのか疑問ですが、
特に漢方薬は西洋薬と異なり、病名投与すべきものではありません。
あくまでもその人の症状に対して処方するもので、
その人の体質なども考慮すべきオーダーメイドの薬です。

また、新潮の言い分だと、ツムラが漢方薬をエキス剤にしたのが悪い
と言わんばかりですが、いちいち煎じて飲まなくていいように作られており、
(煎じ薬だと手間がかかる上に煎じる時間を厳密に守らないといけないのです)
個人的にはとても便利だと思います。
それでもお湯に溶かして内服した方が、確実によく効く場合もあり、
そういう時は飲み方をきちんと患者さんに伝えています。

確かに漢方を知らない医師がむやみに認知症に「抑肝散」を処方しても、
効いたり効かなかったり、効果には非常にばらつきがあります。
きちんと症状を見ていないからなのですが、
効果のない漢方を漫然と処方するのは無駄ですね。

さらに「この漢方Aと漢方Bの組み合わせで、漢方Cも出している
生薬の組み立てになっている」ということもあります。
漢方の初歩的な勉強をしていればわかることですが、
それもわからずに処方する医師が相当数いるのも事実です。
しかしそれはツムラの漢方のせいではなく、
それを使っている医師の側の勉強不足だと思うのですが。

講演をしていて、以前は「○○湯」などとパワーポイントに表記していましたが、
ろくに漢方を知らない医師が、そっくり真似して処方して失敗するケースが多く、
2~3年前からは「漢方方剤A」とか「漢方方剤B」という表記にしましたが、
質疑応答の時間によく「その漢方は何ですか?」と尋ねられます。
「漢方を知らないで処方するのはよくないので敢えて名前は伏せてます」
と、方剤名をお答えするのはやんわりお断りしています。

私自身、漢方の勉強をする前は、患者さんに漢方を処方したことがありません。
自分がきちんと勉強もしてない薬を安易に出すことはできないからです。

たとえば胃薬にしても、漢方薬にはメンタルに効果があるものも多く、
胃が痛い=この漢方、という出し方はしていません。
冷えが強いのか、下痢をしたりしていないか、げっぷがでるのか、など
それぞれの症状に合わせて処方しないと効果が期待できないからです。

当院に転院して来られる方で時々漢方を処方されている人がいて、
正直「ん~??」となる処方を見かけます。
「これ、効いてますか?」と尋ねるとほとんどの場合は、
患者さんの方も首を捻って、「さぁ、出されたので飲んでますけど」
という答えです。
触診も舌診もされず、ろくに問診もされずに出されていることが多く、
ある意味(よくない意味でですが)「勇気あるね」と思ってしまいます。

逆に私の処方した漢方薬で良くなったから、と言って、
うちをドタキャンして、近くのクリニックに勝手に転院する患者さんもたまにいて、
転院先の医師が漢方を知らなければ、症状が変わればどうする気だろう?と
これまた、患者側の妙な勇気に驚かされます。

なんちゃって漢方医と私が呼んでいる、全く勉強もしてないのに、
適当に漢方の本だけ買ってきて「頻尿だからこれ」と処方している
そういう医師は確かに結構いると思います。
ツムラが保険適応のために病名を表記したからですが、
「香蘇散」などはメンタルによく効くのに、「感冒」にしか適応がなく、
保険病名は常に「感冒」で、薬局に行くとこれまた漢方を知らない薬剤師から
「風邪ですか?」と聞かれるという困った現状も実際にあります。

しかしそれも予め患者さんに伝えておけば済む話で、
週刊新潮の言い分には一理あるところもありますが、
結局は使いこなす側の医師の未熟さの問題が大きいのではないでしょうか。

それこそ漢方薬局に行って、効くかどうかもわからない漢方を
保険適応外で月に3~5万もの高額を支払って内服するよりも、
ちゃんと漢方を勉強している医師に、保険適応のエキス剤を処方される方が
どれだけ効果的にも経済的にも良いかは明白です。

漢方にも副作用はありますから、警鐘を鳴らすという意味では
こういう記事が取り上げられる程度に漢方への期待が高いのだと思います。
ネットでも週刊誌でも、記事のセンセーショナルな部分だけ見て、
やたらと不安を煽られて右往左往しすぎもいけないなと思います。

では今日はミスチルの「himawari」を贈ります♪
お彼岸が終わればもう秋ですね・・・。

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