心療内科・精神科・医療相談のことなら 梅田の「まきメンタルクリニック」までご相談ください。

*

未成年の薬物依存 ~スマートドラッグという罠~

      あとで読む

みなさん、こんばんは。
喘息のため、咳がひどくて、声が超ハスキー(というか出てない)西崎です。

さて、今日は常日頃から私が危惧しているベンゾジアゼピン系の薬剤について、
スマートドラッグなどと言われて、乱用されているケースもありますが、
実際に、まだ未成年者が不必要に乱用して、依存している実態をお伝えします。

先日、まきメンタルクリニック(←リンクあり)に受診した10代の女性。
彼女はこちらが驚くほどの量のベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬を、
眠れないからではなく、「周囲と関わるのがうっとおしいから、
とりあえず一日中眠っていれば楽だから」という非常に安易な理由で、
半年ちょっと前から、ネットで購入して服用しているのを、彼氏に見つかり、
その彼氏から親にばれて受診したという人です。

ロヒプノール(薬剤名:フルニトラゼパム)中時間作用型睡眠薬
ユーロジン(薬剤名:エスタゾラム)中時間作用型睡眠薬
リスミー(薬剤名:リルマザホン)短時間~中時間作用型睡眠薬
デパス(薬剤名:エチゾラム)強めの短時間作用型抗不安薬
メイラックス(薬剤名:ロラゼプ酸エチル)中等度~強めの超長時間作用型抗不安薬

などです。しかもいずれも正規品(ジェネリックではないので効果もシャープです)で
常用量を超えての服用が毎日続いているようでした。
そしてロヒプノール(アメリカではレイプドラッグとして扱われているため、
アメリカへの持ち込みは禁止されています)に至っては、一日の用量が
最大でも2㎎なのに、彼女は眠れないと6㎎も内服しているそうです。

こうなるともう完全に薬物依存ですね。

最初はデパス1㎎を1錠で意識がなくなったという彼女でしたが、
すぐにどんどん耐性ができて、薬剤の種類も量もみるみる増えたようで、
一日にこれらを混合して10~12錠は飲まないと眠れないと言っていました。

しかし彼女のいう「眠れない」は本来の不眠ではなく
「日中も寝たいから」という非常に安易な理由なのです。

そんな理由から簡単に、本来は処方箋がなければ手に入らない薬をネットで購入し、
自ら薬物依存になることになんの抵抗もないことに、ちょっと驚きました。

私は彼女にベンゾジアゼピン系の薬剤(特にデパス)に依存してしまったら、
簡単には止められないこと、長期に不必要に連続して内服していると、
内服していない人に比べて将来認知症になるリスクが50%高いというデータが
出ていることなどを十分に説明しましたが、あまりわかってないようでした。

本当に彼女自身に危機感や、治療する気持ちがあるのだろうか?

あまりにあっけらかんとしている彼女を見て、私は嫌な予感がしました。
しかし、このままいくと将来薬物中毒まっしぐらなのは目に見えているため、
まだ10代であることを考え、「とにかく治療はこちらも最善を尽くすけれど
あなたも私が処方する以外の薬を勝手にネットで購入して飲まないように。
約束できないなら治療はできないです」と伝えました。

でも案の定、翌週やって来た彼女は、またネットで購入して内服しているとのこと。
まだ山のように薬は残っているそうです。
自分の彼氏が約束を守らないからイライラすると憤り、彼氏のせいにする彼女に
「あなただって私との約束を守っていないじゃない」と伝えました。
自分が約束を守らないくせに他人が守らないと憤るのはおかしいのです。

「カウンセリングしてください」と希望する彼女のために、私は自分の休診日に
わざわざクリニックに行って待っていましたが、時間になっても来ません。
電話をしても繋がらず、1時間以上してから、彼女の母親からようやく電話があり、
「昨日怪我をしたので今日はいけませんと伝えてほしいとメールがあった」そうです。

転倒して打撲したようですが、家で寝ているようでした。
また大量に睡眠薬や抗不安剤を飲んでいたから転倒などしたのでしょう。
前日怪我をしたのなら、その日のうちに私に連絡できたはずです。
母親にメールを打てるのなら、私が教えた私の携帯にも連絡できるはずです。

「ご自分で連絡できるはずですよ?なぜお母さまに頼むのですか?
わざわざクリニックに出てきて待っている私の時間が非常に無駄です」
私はそう伝えましたが、母親は「帰ってからきつく叱っておきます」と
一応は申し訳ないと言っていましたが、うわべだけの感じが拭えません。
結局本人からは何の謝罪もなく、予想通り、後日の診察を無断キャンセル。

たとえ10代でも、ホイホイと薬を処方してくれる医師はいるでしょうが、
一度依存になったら、止めるには相当覚悟が必要です。
断薬専門のクリニックも東京などにありますが、高額な治療費が必要です。
さらによくわからないサプリだのなんだのを必ず売りつけられます。

私はこの親子はどちらにも問題があると思っています。
母親が過保護だから子供がニートの状態で、なおかつ薬物依存になるのです。
病気でもないのに、働きもせず、教育を受けることも放棄し、家事もせず、
「うっとおしい」から一日寝て過ごすために薬物依存になっている。
本当に娘の将来を考えていれば、そういう状態にしておくはずはありません。

私が母親なら、人様に迷惑をかけたら、きちんと謝らせます。
そしてなぜ謝るべきなのかをしっかりと話し合います。

将来困るのは私ではなく彼女自身なのです。
極端に言えば、彼女が深刻な薬物依存になろうがどうしようが
私にはまったく関係ありません。

彼女に問題があるとしたら、メンタルでしょう。
しかし「病気」ではなく、なんでも自分できちんと受け止めずに逃げて、
他人のせいにしたりする未熟な甘えたメンタルの弱さ以外のなにものでもありません。
母親がそれをさらに助長させている状態なのです。

いずれ彼女はさらに乱用が加速していくか、危険な薬物に手を出すでしょう。
彼女が乱用している薬は医師の処方箋のもとでのみ手に入る
いわゆるスマートドラッグと言われているものです。
しかしこの薬のどこが「スマート」なんでしょう?
※ここでいうスマートドラッグとは、医師の処方箋が必要な睡眠薬や抗不安薬です。

メディアなどで問題になっている若者の間でのこうした薬物の乱用。
大麻や覚せい剤とは違って違法じゃないと思っているようですが、
医師の処方箋なしで不法に入手している時点で違法なのです。
こんなこともわからずに乱用している実態を思うとぞっとしますね。

では今日は懐かしい河口恭吾の「桜」を贈ります♪

 - 院長のブログ , , , , ,

  関連記事

no image
インフルエンザワクチン接種のお知らせ

今年はまだ暑い9月からインフルエンザが流行っています。 罹患するとコロナとの鑑別 …

卒業する人と診療妨害?する人と・・・。

みなさん、こんばんは♪ バタバタしてブログをさぼっていたら、早いものでもう8月・ …

診療報酬改定について~誰ファーストなのか?~

みなさん、こんばんは。 ブログをさぼっている間にすっかり桜も散ってしまいましたね …

選定医療における予約金について

「選定医療」とは「贅沢医療」とも呼ばれます。 厚生労働省が保険制度と併用して保険 …

no image
秋休みのお知らせ

当院は毎年お盆にお休みをいただかない代わりに秋にお休みをいただいており、 本年度 …

謎の受診や転院

みなさん、こんばんは。 まきメンタルクリニックは今年も無事に診察終了です。 最近 …

漢方の市販薬について

みなさん、こんばんは。 昨日はすごい嵐で、桜も花散らしの風雨で散ってしまいました …

ADHD ~大人の発達障害~

みなさん、こんばんは。 最近、当院ではADHD(注意欠陥多動障害)じゃないか?と …

お盆休みという感覚

みなさん、こんばんは。 今日は大阪では突然雷雨があったりと、変なお天気でした。 …

メンタルクリニックの放火事件

みなさん、こんにちは。 先週の金曜日に私と同じ北区でご開業されていた メンタルク …