エビリファイ持効性水懸筋注用薬 LAI
みなさん、こんにちは。
今日は新しく出たエビリファイ持効性水懸筋注用薬剤(LAI)について、
私なりの疑問を書きたいと思います。
私はエビリファイの錠剤と液剤の違いについての講演会はしていますが、
エビリファイという薬自体が、まだまだジプレキサよりシェアが少ない事実があります。
エビリファイは日本の大塚製薬の開発した画期的な統合失調治療薬で、
ジプレキサのように体重増加が著しいとか、
血糖値が上がりやすいという副作用はなく、
アメリカのFDA (米国食品医薬品局)でも
第一選択薬として推奨されている非常にいい薬だと思います。
しかし、レストレスレッグス症候群 (ムズムズ足)などが稀に認められます。
特に、そのことで睡眠が妨げられる場合は、内服を中断するしかありませんが、
私自身は液剤を推奨しているので、
錠剤よりは液剤の方が副作用も少ないようです。
しかしながら、日本ではエビリファイ自体をまだまだ使いこなせていない医師が多く、
さらに錠剤と液剤の使い分けがよくわからないという人も多いのが現状です。
「エビリファイの剤型による効果の差はない」「効果の違いは気のせいだ」と
堂々と院長ブログに書かいている医師もいるほどです。
この医師は、自分のブログ内で、薬理学的にのみ説明しており、
頭では理解していても、臨床現場での感覚が掴めていない印象です。
患者さん自身が液剤と錠剤の違いを実感しているのですから。
もちろん、「あまり違いがわからない」という患者さんもいるので、
そういう人には、薬価の安い錠剤を処方していますし、
当然ながら、錠剤の方がいい場合もあります。
だからこそ剤型による使い分けが必要になる薬だと言えます。
エビリファイの液剤が発売される前に、リスパダールの液剤というのがありました。
リスパダールが世の中に出た時は、画期的な新薬だと言われていました。
液剤を使うとより効果的で、量も少なくて済むという経験は、
実はリスパダール液を使っていたからわかっていたのですが、
エビリファイほど錠剤と液剤の差はありませんでした。
リスパダールはプロラクチンという乳汁分泌ホルモンが上昇するほか、
眠気、ふらつき、嚥下困難(そのための誤嚥)、呂律困難などもあり、
実は高齢者には不向きな薬なのですが、
やたらとリスパダールを出す医師も多いので困ります。
エビリファイという薬が出た今、私はリスパダールはまったく使っておりません。
実は、リスパダールの持効性筋注薬、
リスパダールコンスタが発売された時、
私なりに十分に勉強してから、
入院患者さんと相談し、注射した経験があります。
毎日苦い液剤を内服しなくていいのなら、
患者さんも楽だろうと思ったので、
リスパダール液で、症状が安定していた患者さん3名に注射したところ、
なんと3名とも症状が悪化したという経験があります。
そのうち1名は、農園作業などにも積極的に参加し、
とても良くなっていたのに、コンスタを数回注射してから、
幻覚妄想が再燃し、隔離病室に隔離しなくてはならないほど悪化してしまい、
申し訳ない気持ちでいっぱいになり、とても辛かった経験があります。
成分が同じ薬で持効性の注射になっただけなのに、こんなに悪化するなんて・・・。
その後、発売元である、ヤンセンファーマに副作用報告をしようとしたら、
担当者が何度言っても報告用の用紙を持って来ない上に、
なんとか私に泣きついて、副作用報告をもみ消そうとしたのには驚きました。
だから今回のエビリファイ持効性水懸命筋注用薬(LAI)についても懐疑的です。
錠剤にして6㎎~24㎎というかなり幅広い用量がLAIだと一律400㎎です。
こんなに錠剤の用量幅が違うのに、注射だと一律400㎎って疑問になりませんか?
しかも薬価がびっくりするほど高いのです。
400㎎1回分で46500円。保険が効いても1ヶ月1万5千円弱。
高い液剤を30ml使っている場合はともかく、
6mlとか3mlとかで安定している人は、
2.5倍から5倍くらいに薬価が跳ね上がりますね。
ただ、持効性なので注射自体は月に一度で構いませんが、逆に言うと、
リスパダールコンスタのように液剤や錠剤では出なかった副作用が出た場合、
薬が抜けるまでに非常に長くかかることになります。
これはものすごくハイリスクですよね。
現在のところ、副作用の報告はないそうですが、慎重を期すべきでしょう。
リスパダールコンスタも、エビリファイ持効性水懸筋注用薬LAIも、
リスパダールやエビリファイで症状が安定している人に限り、
使うこととなっていますが、5月20日に発売され、
1ヶ月ちょっとですでに1万例に使われているそうです。
そのうち1千例は大阪だそうです。
大阪の医師は新しい薬が好きなのでしょうか?
考えてみればエビリファイは発売当初も用量設定で大失敗しているのです。
大学病院や大きな病院に、高い費用を支払って治験をした結果、
統合失調症の初期投与量を6㎎からとしてしまったのですが、
発売当初、私はこの用量が、先行販売されたアメリカでは、
抗うつ剤の補助療法の用量であることを、
ロイター中枢神経ニュースで知っていたので、
「こんな用量設定は絶対おかしい」と、1年間は投与を見合わせた薬なのです。
どんなにいい薬でも、用量設定が致命的に間違っていれば、逆効果でしかありません。
案の定、統合失調症患者さん達が一斉に「目覚め現象」なるものを起こし、
妙にクリアになって病棟がざわついてしまって大変だった時期があります。
私は、このことについては、自分で勉強せずに処方した医師にも問題があると思いますが、
大学病院や大きな精神科病院の治験結果を疑いたくなったのは言うまでもありません。
大塚製薬の宣伝を鵜吞みにせずに、医師が自分でちゃんと勉強した上で、
患者さんに十分説明をして、患者さんの同意を得てから使用して欲しいと願います。
医師が「使ってみたい」から使うのではなく、患者さんにも十分納得してもらうこと、
これはとても大事なことです。日本では医師が一方的に薬を決めてしまいがちです。
患者側もネットの情報に振り回されている人などは、あれはダメ、これもダメ、
全く副作用のない薬にして!と言われても、絶対に何も副作用のない薬はありません。
最終的な処方権は医師にありますが、合意のもとに成り立つべきでしょう。
では今日はボサノバの名曲「イパネマの娘」小野リサバージョンを贈ります♪
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