DEATH NOTE ~神になろうとした青年2~
みなさん、珍しく連日にこんばんは。
今日も暑い一日でしたね~。
さてさて、「DEATH NOTE」の続きになります。
なぜ私が“L”(=エル)よりニアに共感してしまうのか?
それはたとえ死刑囚で、その時間に死刑執行されるとわかっていても、
司法取引というアメリカらしいやり方で、自分の偽者を利用した“L”よりも
誰の名前もデス・ノートに書き込むことなく、堂々とキラに勝ちにいった方法にあります。
ニアにとって、メロという存在、その冷静さを欠いたと言える行動のお陰もあり、
運にも、仲間にも恵まれたということもあるかもしれません。
ただ、やはり、最後の最後まで手を緩めることがなかったニア。
もし詰めが甘ければ、本当に一歩間違えれば、キラの勝利だったのです。
「DEATH NOTE」第12巻Page100で、
勝利を確信したキラは心中で以下のように思っています。
「おまえは甘い・・・ “L”に はるかに劣る
“L”なら必ずノートが偽の可能性に気づき 試していただろう
その機会はあった 人の命・・・悪人でいいじゃないか
一人や二人犠牲にして 確かめるべきなんだ
全く おまえには がっかりだ 張り合いがなさすぎる
おまえは美しく勝とうとしすぎた」
たとえ悪人であってもノートに名前を書くという行為をせずに、
完膚なきまでにキラである月(ライト)を追い詰め、
確たる証拠をつきつけて、キラを惨敗させなければ、
“L”の遺志を継いでいるとはいえないと考えているニアにとって、
この「美しく勝つ」というやり方にこだわるのは当然であったと言えるでしょう。
自分を新世界の神だと思っている夜神月(やがみ ライト)
私はこの物語の中で、彼にはまったく共感できませんでした。
世の中は、理不尽なことだらけです。
だからと言って、誰かが「こいつは悪人だから殺す」という権利はありません。
死神の力やデス・ノートの力に魅入られて、
自分を新世界の神だなどと思って
人を「殺す」という方法で裁くなど、
夜神月は驕り高ぶっているとしか思えません。
夜神月を、本来は正義感が強い真面目な人間だと
思っている人もいるかもしれませんが、
私はそうは思いません。本来の彼の本性がキラなのではないでしょうか。
自分の理想が絶対だとし、目的のためには
自分を愛してくれる女性も利用して、
いざとなったら殺してしまうような人間・・・
どこにも愛が感じられません。
私がクリニックを開業せざるを得ない状況になった時、
私は「私ならここに行きたいと思うクリニックにしよう」と決意しました。
梅田のど真ん中という場所も、どんなに家賃が割高でも
患者さんの「足」を考えれば譲れないものでした。
完全予約制で待たせないというのも、どんなことがあっても貫きました。
散々待たされて、ろくに話も聞いてもらえない。
何か訴えれば「じゃあ、このお薬出しておきます」と薬漬けにされる。
まして薬の説明など全くない。
これが心療内科の現状です。おそらく99%以上がこうでしょう。
そして、そういう開業医の方が、私よりも何倍も儲かっているのです。
だからと言って私が、そういう医師達を裁く権利はありません。
真面目にやったもん負けなのは理不尽だとは思いますが、
それを行政が認めている以上、私は従うしかありません。
収入も煩わしいことも、すべて取り払った時に、
「自分ならこの先生に診て貰いたい!」と思える医師になっているか?
それが私の基準であり、他のクリニックが違法なことをして
たとえば初診に30分以上かけていないのに通院精神療法をとったり、
何をしていようが、そんなことは私には関係ありません。
多くの精神科医が開業して陥るのは、「通院精神療法料」という、
精神科医しかもらえない保険点数をいかに違法にもらうかということ。
この誘惑はデス・ノートの誘惑と同じくらいのものだと言えます。
つまり、夜神月が自分を新世界の神だと思ってしまったように、
精神科医はいともたやすく処方マシーンと化してしまうモノなのです。
その落とし穴に陥らずに、しっかりした信念を持った者だけが
本当の精神療法を行うことのできる精神科医です。
最近、私のクリニックのすぐ近くに、
やたらホームページに無駄にお金をかけていそうなメンタルクリニックが
5月に開業したことを、製薬会社の人から教えられました。
先日そこから当院に転院してきた方がおられ、聞いてみるとやはり
「パソコンの画面に文字ばかり打ち込んで、話を聞いてくれてない。
お薬もなんの説明もないので、大丈夫かと不安になった」そうです。
そしてやはり30分も話を聞いてもらってないのに、
しっかり初診料と通院精神療法料を取られていたということでした。
最初からこんな姿勢では、もう「開業=お金儲け」としか思えません。
私があくまでも噂に聞く限り、そこはまだまだ暇そうらしいです。
うちより、より大阪駅に近い、絶好の立地条件なのに暇そうって・・・。
別に完全予約制でもないのでいくらでも患者さんは行きそうですが、
暇なのならせめてもう少し丁寧に診察すればいいのに。
いくらホームページにお金をかけても、何の意味もありません。
まきメンタルクリニック のホームページは、とてもシンプルです。
院内の紹介だの「よくあるご質問」だのはすべて意味がないので省略。
私が患者なら知りたいと思う情報しか入れていません。
自分のやり方で開業すると、絶対に儲からないのはわかっていたので、
覚悟はしていました。でも本当に貧乏になりましたヽ(゜▽、゜)ノ
それでも自分が必要だと思えるだけ患者さん一人一人に時間をかけられるし、
上から「患者の数をもっと捌け!」などという嫌味も言われません。
選定医療を申請し、予約金をいただくという最低限の付加価値をつけてみました。
初診のドタキャンや無断キャンセルを防止するためですが、
最初は初診の予約が減るだろうと思っていましたが、そんなこともなく、
みなさん、きちんと支払ってくださいます。ありがたいことですね。
私には私の信念があります。
しかしそれを他の人に押し付けようとは思いません。
医療においてもその姿勢は同じです。
「DEATH NOTE」でニアが日本のキラ対策本部を痛烈に批判したように、
私も現代の精神科医療を痛烈に批判はしますが、
まともにやっている自分が理不尽な目にあっているとも思いません。
先日も書いたように、ほぼ95%の、非常にマナーを守れる患者さんに恵まれていて
とても幸せな精神科医だと言えるでしょう。
私なら「私の治療を受けたい」と思って診察しているのだから、
私自身超ポジティブだと思います。
逆に散々患者さんを待たせて、ほとんど話も聞かずに薬だけだす精神科医は
自分が精神を患った時に「自分の診察を受けたい」と思っているのでしょうか?
きっとそんなことは思えないと思うので、可哀想というか、不幸ですよね・・・。
いつも言っているように、私の治療方針に反対ならうちに来なければいいだけです。
合わないと思えば転院してもらって結構です。
転院する権利もありますし、ルールを守れない人はむしろ私からお断りです。
ただし、予約を無断キャンセルするような診療妨害をする権利は誰にもありません。
ただそれだけのことです。
話はDEATH NOTEに戻って、ニアが最後にキラである夜神月を追い詰めた場面で、
自分やメロを冷静に分析し、キラに迫る場面もまた印象的です。
第12巻 Page104より
「・・・メロはいつも一番になる 私を超え “L”を超す
そう言っていましたが・・・・わかっていたんです
私は“L”を超せない事・・・
もしかしたら私は行動力に欠け メロは冷静さに欠ける・・・
つまり互いが互いの目標とする者を超せなくとも・・・
二人なら“L”に並べる 二人ならを“L”超せる
そして今 私達は “L”が証拠を挙げられなかったキラに
“L”が破れたキラに・・・確たる証拠を突きつけている!
言い逃れられるものなら 言い逃れてみせてください」
追い詰められた月が開き直って「僕がキラだ」「新世界の神だ」
「もはや僕が正義」と述べ、自分こそがこの腐った世界を革め
創生するべき選ばれた人間だと言い切ります。
悪いことをしているとキラに裁かれ、殺されるから、犯罪が減ったとしても、
それでは人間の本質まで変えることはできないでしょう。
精神科医にとってサイコパス(精神病質:いわゆる反社会性人格障害に
近い状態ではあっても似て非なるものです)は、少なくとも私には手に負えません。
私からみればサイコパスだと思われるような犯罪者は明らかに何人かいますが、
こういう人間を殺してしまえばそれで世の中がすっきり変わるとも思えません。
でもたとえサイコパスであったとしても、どんなに不完全な法であったとしても、
法の下に裁きを行うべきであり、それが値するなら死刑にすればいいのです。
むしろ最後の方ではキラ自身が神と思い込んでいるサイコパスのように感じました。
ニアは「もし神がいて 神の教示があったとしても 私は一考し
それが正しいか正しくないかは自分で決めます」と言います
さらに「自分を神と言い 片っ端から人を殺すことは 私の中では絶対に悪です」
と言い、「・・・ここに居る 私とあなた以外の者が どう考え
何を正しい・・・正義と考えるか・・・」と自分達以外の者に決断を委ねた時に、
第12巻 Page 105では
夜神月は自分がキラであることを明かしても誰一人自分にひれ伏したり
擁護しようとしない日本の捜査仲間とSPKに対して
「言ってもわからぬ馬鹿ばかり」とついに本性をむき出しにして、見下します。
あくまでも自分だけの正義を振りかざそうとはしないニアに対し、
自分が正義であり、自分こそが選ばれた新世界の神なのだと主張するキラ。
キラがいなくなって、また世界はもとのように犯罪が横行します。
それでもそれが「人間の世界」なのだと私は思います。
正義とは何なのか?誰がそれを決めるのか?
人が人を裁くとはどういうことなのか?
難しい課題ですが、常に人間はこの課題を背負っています。
少年ジャンプに2年間にわたって連載されたマンガですが、
当時、「ワンピース」だの「NARUTO」などのバトルマンガが掲載され、
「DEATH NOTE」は異色だったと言われています。
絵の綺麗さや、ストーリーのプロットの緻密で精緻な高度さを考えると、
日本が誇るマンガ文化にふさわしいと思います。
では今日は「DEATH NOTE」のスピンオフとして製作された
「L change the World」の予告編を贈ります♪
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