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精神科医が使う「適応障害」

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みなさん、こんばんは音譜

急に暑くなったと思ったら、昨夜は少し肌寒かったですね。

 

さて、女優の深田恭子さんが「適応障害で休養」というニュースに

驚かれた方も多いことでしょう。

深田恭子さん、いつもちょっと舌足らずな甘えた声で同じような演技をされるので、

正直個人的には女優としては残念ながらあまり評価してないのですが、

20年以上の長きにわたってあのスタイルと可愛さを保ちつつ、

たくさんの人から愛されるというのは並大抵のことではないと思います。

 

私はニュースを見た途端、「朝からだるおも~ダウンあせる」という

あのCMが頭の中をぐるぐる回りました。

きっと実生活の中でもあんな感じでしんどかったでしょうに、

つい最近までにこにこと笑顔でお仕事され、必要とあらば

身体には不必要と思われるダイエットなども頑張られたのだと思います。

 

さて、有名人がひとたび「適応障害」という診断をされたとなると、

この「適応障害」という診断名が独り歩きしまくるという懸念があります。

 

以前皇太子妃だった雅子様がやはり「適応障害」と診断され、

長期に休養されたことを記憶されている方も多いでしょう。

 

では実際に適応障害とはどういう状況のことなのでしょうかはてなマーク

またうつ病とはどう違うのでしょうかはてなマーク

 

私たち精神科医が書類などを記載するときに使う診断分類である

ICD-10(世界保健機関の診断ガイドライン)では、適応障害の診断基準を、

“ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が

著しく障害されている状態” と定義しています。

 

また日常の診断に一般的によく用いるのはアメリカの操作的診断基準DSM-5です。

そこには以下のAからEまでが列挙され、これらすべてを満たすものとされています。

 

A  はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから

3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現
B.  これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、

それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。

1  症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、           そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。。

2  社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害。

C.  ストレス関連性障害は他の精神疾患の基準を満たしていないこと。

すでに精神疾患を患っている場合には、それが悪化した状態ではない。
D.   その症状は、正常の死別反応を示すものではない
E.  そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、

症状が症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

 

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

 

つまりうつだと内因性といってはっきりした誘因がないこともあるのですが、

適応障害は明確なストレス因子があるということです。

ですからそのストレス因子を取り除かなければ快方には向かいません。

わかりやすく言えば「環境調整が必要」ということです。

 

症状としてはうつ病と同様憂うつ気分、意欲の低下、不安、不眠といった精神症状から、

食欲不振、全身倦怠感、頭痛や頭重感、めまい、動悸などの身体症状も認めます。

 

しかし行動面だと必ずしもうつ病のように自責的となって自己否定的となったり、

悲哀反応ばかりではなく、本来はそうではなかったのにやたらキレやすくなったり、

感情的行動をとったり、食行動の異常(過食や拒食)、遅刻や無断欠勤など

社会生活上本人も周囲の人も不利益を被るような行動が目立ったりすることもあります。

そしてその行動に対して必ずしも罪責感を持たないこともあります。

これはすぐに自責感にさいなまれて落ち込むうつ病と大きく異なる点です。

 

またうつ病の場合は診断基準でも「ほとんど一日中」というキーワードがあるのですが、

ストレス因となっていることや場所から離れても、抑うつ気分が持続し、無気力です。

いわゆる喜びや興味の喪失を認めます。

一方、適応障害の場合、ストレス因から離れると比較的安定することも多いのです。

 

例えば会社員だと金曜の夜になるとホッとして、土日は気持ちよく過ごせる、

でも日曜の夜になると「あぁ、また明日から仕事かぁドクロ」とどんよりするような

それのもっと劇的なバージョンとでもいいますか・・・汗

 

典型的なうつ病の場合、私も休職を勧める際にしっかり伝えるのですが、

「会社を休んでも気持ちはしばらくは休まりません。むしろ会社を休んでいるという

罪悪感でしんどいかもしれませんが、お薬が効いてくるまではそうなのです」と。

だからしっかりと抗うつ剤や必要に応じた薬を飲んで、休まなくてはならないのです。

 

適応障害の場合、会社を休んだだけでかなり気分は改善するので、

薬物療法はむしろ最低限にしておいた方がいいと思います。

適応障害に必要なのは薬よりもむしろ環境調整なのです。

 

ここまで読まれて鋭い方は気づかれたかもしれませんが、

適応障害といわゆる現代型うつって同じなの?と思われた方もいらっしゃるでしょう。

正式には現代型うつという分類は存在しません。

自責的であるよりむしろ他罰的で、休職期間中はちゃっかり旅行する、

そんな単なるわがままとしか思えない人が「うつ病」という診断書を提出して

楽しそうに休んでいたりすると、会社に残った他の人は迷惑でしかありません。

こうして現代型うつという名称がマスコミに登場したと思われます。

 

こういうどうみてもその人の未熟な人格の問題で周囲と折り合いがつかず、

自分を顧みることなく、例えば上司がパワハラしてきたと大主張して

あの人のせいでうつになりました!みたいに来る方もいないではありません。

同僚や上司をやたら攻撃し、むしろとても元気そうなのに「しんどい!」とか

「うつだと思うんです!」と大主張する人は、会社にいたら大変だろうなと思います。

確かにこの人が休んでいない方が会社の空気は平和なんじゃないだろうか、と

思うような人は稀にいます。

 

「会社からメンタルクリニックで診断書をもらって来いと言われました」と言われても、

こういう人たちに「うつ病」という病名をつけるのはいくらなんでも憚られます。

そもそも会社の都合で医学的根拠や診断とは関係なく診断書を求められるのは、

なんだか医療をなんだと思っているんだと言いたくなりますが、

社会や会社に適応できていないという意味で「適応障害」と書くこともあります。

 

こういう人たちは休職中はとにかく元気で、むしろ絶好調です。

次回の予約を取ろうとしても「その日はちょっと旅行の予定なんですよね」とか

「あ、その日は友達と会う約束してますから無理ですね」などと平気で言います。

こちらは診断書を書いて夏休みをあげているわけではありません。

入院する必要がないので自宅療養しているわけで、あくまで治療のために

お休みしているのですが、そんなことは頭から吹き飛んでるようです。

もちろん全く楽しいことをするなとは言いませんが、エンジョイしすぎなのです。

 

挙句に「〇月末まで休みたいんです」とか自分の都合を医療に押し付けます。

「あのね、医学的判断で期間を決めるわけで、あなたの希望じゃないですよ」

とこちらがたまりかねて伝えてもまったく平気です。

「だって会社にはもう〇月末まで休むと伝えてるしぃ」などと言い出します。

 

本来「適応障害」という診断のつく人は、適応できなかったというよりも

むしろ過剰に適応しようと努力しすぎていた場合が多いのです。

必死で置かれた状況に適応しようとあがいた結果、

神経がすり減って不眠や抑うつ気分、不安焦燥などが生じ、

気分が不安定になり、もはや適応できなくなるのです。

 

単なる未熟な人格で、周囲や社会に対してほとんど何も適応の努力をせず、

なんでも人のせいにするような人とは明らかに違うのですが、

精神科医が「適応障害」とつける場合、残念ながら後者の人も含まれることがあります。

 

もちろん、今回の深田恭子さんの場合は前者です。

ネットニュースをちらっと見ると関係者の話として次のように語られています。

「急に体調不良や精神的に落ち込むことがあった。ひどい時には

仕事をするのも困難になった。時間をおけば自然に元気になることもあり、

状態のいい時が続くケースもあったため、診察や通院はすることなく、

だましだまし仕事に穴をあけずに活動してきたようだ」

時間をおけば元気になるとかいい状態が続くこともあるなどは、うつ病とは異なります。

キャリアを重ね、周囲からの期待も大きいため、コロナ禍という要因も重なり、

神経をすり減らしながら適応しようと必死に頑張った結果、もうこれ以上無理、

という状態になったのでしょう。

 

38歳にしてこれだけ可愛らしさを維持しながら「深キョン」と呼ばれて愛されていると、

仕事量を調整するなどの環境調整ももちろん必要ですが、私は彼女自身が

「深キョンから少し脱却してもいいかな」と思えるようになれればいいなと思います。

きっと仕事柄プライベートでも緊張を強いられていた面も多いと思います。

心ないマスコミが周囲を張り込んだりしませんように。

ゆっくりと期限を決めずに飽きるくらいに休養してほしいと思います。

 

Written by まきメンタルクリニック  院長 西崎真紀

 

では今日は懐かしいLOVE PSYCHEDELICO のLast Smile を贈ります音譜

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