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叱ること

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みなさん、こんばんは。
今日も一日寒かったですね。
私の住んでいるところでは日が暮れると氷点下になります。

ところで先週の金曜日、私は久々に患者さんを本気で叱りました。
但し、「感情で怒る」のと「必要だから叱る」は違います。
なぜ叱ったかというと、治療に対する姿勢がなっていなかったからです。

仮にその人をAさんとしましょう。
Aさんは昨年の8月にまきメンタルクリニックを初診となりました。

当院では初診から遅くとも10日以内には2回目の受診をしていただきます。
お薬の飲み心地や副作用の有無を聞き、採血結果などをお知らせするとともに、
TEG(東大式エゴグラム)という性格テストを初診時の終わりにして、
それを私が診察終了後に丁寧に分析して、その結果を説明するためです。

ところがこの2回目の受診を無断でキャンセルする人が何人かいます。
例えば自分の失恋話の経緯をしつこく話し続けた女性などがそうです。
そしてAさんも、「用事があって行けない」という連絡こそありましたが、
結局はその後も受診には来ませんでした。

私がAさんに対して「ADHD(注意欠陥多動障害)の疑いが強い」と
いう診断を伝えたのが気に入らなかったのかもしれません。
とはいえ、こういう人は完全予約制の当院では迷惑でしかないので
即ブラックリストに入れています。ブラックリストに入った人は
治療の信頼関係が構築できない人として、当院では二度と診ません。

おそらく私の推測ですが、Aさんはその後もいくつかの心療内科に行ったのでしょう。
正直、当院ほどお待たせせずに初診時にしっかりと話を聞くという
心療内科はほとんどないと思います。

そのせいか、今年に入ってAさんから「もう一度診てほしい」という
予約の電話が入りました。当然再初診扱いになりますが、
「今度こそきちんと通院して治療を受ける」ということだったので、
私もADHDの患者さんの辛さや生きにくさがわかるので、OKしました。

当日、私は再度ADHDの診断の根拠を伝え、
今後の治療方針、使うお薬(ストラテラがメインになります)なども説明し、
なおかつ、納得してから治療を受けてほしいので、
ストラテラの発売元のイーライリリーが出している
「ブラックジャックによろしく」のADHD版の小冊子を貸出しました。

しかしADHDというのは、あくまでも発達障害の一つであり、
治療にはそこそこの時間がかかるのに、Aさんは10日後くらいの
仕事の面接の時までにシャキッとしたい、という無茶な要求をして来ました。
私は「そんな夢みたいな薬があれば、誰もADHDで苦しんでいないよ」と
その無茶な要求には応えられないことを、
Aさんの予約枠を大幅に超えて次の患者さんが待っているのに、
「面接の日にはシャキッとしておきたい」とこだわるAさんのために、
また丁寧に説明しなくてはなりませんでした。

2回目の受診でAさんは前回の説明を聞いていなかったことが判明しましたが、
そこはADHDの患者さんなので、仕方ないなと思いました。
そしてその日はストラテラについての詳しい説明を行いました。
10㎎で保険が効いても1カプセル100円くらいと高価なので、
まずは少量、本来成人は40㎎からとなっていますが20㎎から開始。

ところが3回目にやって来たAさんは、とにかく薬が高い!とのことで
ストラテラは10㎎しか飲んでいないし、
私がストラテラと一緒にADHDの患者さんによく処方する
エビリファイ3㎎(こちらも適応外ですがADHDの患者さんにはよく効きます)
を漢方薬に変えろとか、自分がどのようになりたいのかより、
薬代のことばかりがメインになってしまっているようでした。

何を説明しても、こちらの説明はすぐ忘れるのにメモも取らず、
ただただ自分の要求のみをなんとかして押し通そうとするAさんに
私はガックリしました。

患者さんに前もって薬代がどのくらいかかるかなど説明してくれる医師が
いったいどのくらいいるのでしょうか?
だけど私は患者さんの負担が大きいと思えば必ず説明しています。
それに対して将来的にどういう公的補助を使っていけるかなどもきちんと説明し、
ちゃんと納得してもらってから治療を開始したのに、こういう態度のAさん。

「もうね、ADHDの人は薬さえ飲めば治るわけじゃないから、
どう工夫しながら仕事や生活をしてゆくかも、一緒に考えていこうとか、
将来的にどういう公的補助が受けられるかも説明しましたよね?」と伝えても、
Aさんは薬局の薬代の内訳を自分で計算し、しかも間違った計算ですが、
そこから導き出した、実際より3倍ほど高い薬価のことばかりを訴えました。

とうとう私は「私は処方マシーンじゃないからね、治りたくないならいいよ。
『この薬出してください』って言えば出してくれる精神科医もいるからね、
そういうところに行って自分の好きなように薬を出してもらえば?」と言いました。
それでもまだ薬代にこだわるAさんに、私はもうこれは叱らなくてはと思いました。

「急に来て、10日後にはシャキッとさせろとか、この薬を漢方にしろとか・・・
薬代のことも説明したよね?納得して開始した治療なのに、薬が高いからって
きちんと内服せずに、治りたくないならそのまま苦しむのはあなただからね。
治療する気がないなら来なくていいです。もう帰ってください」

Aさんはそこまで言われても「(治療を)やる気がないわけじゃないですけど」
と言いつつ、でも内服しますと言うでもなく、自分の意見が通るかどうかが
最大の関心ごとのようで、それ以外に頭が回らなくなったのでしょう。

ADHDの患者さんは、同時にあれこれ考えられない面があるので仕方ないですが、
それが症状としてというより、とにかく自分の意見を押し通すというところで
止まってしまっては、この先もとても一緒に治療を進めることができません。

私が「もう来なくていいです」というくらい叱ることはほぼありませんが、
患者さんが治療をこちらに丸投げして自分で努力しない時には叱ります。
何一つ自分では努力しないで、すべてを何とかしてもらおうとする人とは
きちんとした治療関係を築くことが無理だと思います。

こういう丸投げの患者さんに限って、あれこれと無理や文句を言うのです。
時には叱ることも患者教育として必要だと思います。
やっぱり治療の主役は患者さん自身なのだから、自助努力も必要でしょう。
「はいはい、そうですね」と薬ばかり出す精神科医は無責任ですが、
きっととっても楽でしょう。だって患者さんがどうなっても関係ないのですから。

叱ってくれる人の少なくなった今、「叱る」というのは
こちらがまだ相手に期待をしている証拠なのです。
見捨ててしまえば、叱るエネルギーも無駄だと思うでしょう。

私は受付嬢を陰に呼び、「ADHDの人だから、きっともうちゃんと頭が
回っていないと思うから、あなたから『もしきちんと治療を受けるのなら
先生に言ってみましょうか?』と聞いてあげて」とフォローまでしてみました。

次回の予約は取りませんでしたが、Aさんが変なところに行って薬漬けになったり、
治療が遅れてまた何か大きく落ち込む前に、きちんと問題と向き合って、
どこでもいいからしっかりと治療を受けることを祈っていましょう。

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