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ADHD ~大人の発達障害~

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みなさん、こんばんは。

最近、当院ではADHD(注意欠陥多動障害)じゃないか?ということで
医療相談を受ける方が増えています。

ADHDは発達の問題なので、成人になってから発症するものではなく、
子どもの頃からなんらかの問題を抱えながらも、
子どもだからということで許容されて来たり、
あるいは自分自身で一生懸命工夫して来た人たちです。

例えば、しょっちゅう鍵やスマホをどこにやったか忘れて探し回るので、
鍵を置く場所を決めるようにする。
約束や用事を忘れることが多いので、スマホでアラームをセットしたり、
家族とカレンダーを共有して、時間にコールしてもらうようにするなどです。

一見、その程度のことなら誰でもしてるじゃない、と言われそうですが、
ADHDの人たちは、それによって生活に支障を来たす頻度も程度も非常に高いのです。

さらに一生懸命にやっているのに、不注意が多く、
一度に並行していくつかのことを処理しないといけない場合などは
優先順位がうまくつけらず、段取りも上手にできないため、
一つのことをやっていると他のことを忘れてしまっていたりして、
混乱して物事をうまく処理することが難しい傾向が強いのです。

そのため「さっきも言ったよね?」「何度言えばわかるの?」と言われます。

また五感が敏感であることが多く、音や光などの刺激に反応しやすく、
頭の中は常に忙しくて次々と思い浮かんだりするので、
会議などで人の話を聞いていても、ちょっとした音で注意がそちらにそがれてしまったり、
あるいは話されている言葉の一つにひっかかり、そこから思考を広げてしまって、
話に集中できない状態となり、「聞いてるの?」と言われてしまったりします。

そういうことが続くと、相手はイライラして来て、
ADHDの人は「普通は〇〇できるよね」などと言われてしまいます。

確かにADHDの人を相手にしていると、段取りも悪く、いちいち業務が滞ったり、
確認しなくてはいけないので、ついついこうした言葉が出てしまうのですが、
別にサボろうとしているとか、怠けているわけでもないのに、
こういう言葉を日常的に言われてしまうため、
何が普通かわからないし、自分はどうしてできないのだろう?
落ち込んでしまうのです。

社会人になると、「うっかり」では済まされなくなって来て、
自分でもどうしていいのか混乱してネットなどを調べて、
ADHDじゃないか?と思って相談に来られます。

上記のような状態なので、ほとんどの人が受診に至るまでに
自尊心を傷つけられ、自己評価が非常に低くなっているように思います。

自分がADHDじゃないか?と思って相談してくる人はまだいいのです。
そういう知識もないまま、気分がどんどん落ち込んで、うつ状態になったり、
常に緊張して注意していないといけないので、不安が強くなったりして、
「憂うつ感」や「不安感」などを主訴に訴えて受診して来られた場合、
本人の訴えは当然「気分が落ち込む」「不安が強い」ということばかりに
焦点を当てて話をするため、こちらもADHDを見落としがちになります。

ADHDの多動の部分がもともとあまり目立たなかったり、
衝動性が目立つ場合などは、ちょっとしたことでカッとなったりするので
「躁うつ病」と診断され、躁うつ病の治療を受けている場合も結構あります。

当院に転院して来られた方でも、数名は躁うつ病として治療されているが、
ちっともよくならないので転院して来たという方たちです。

丁寧に問診していると、「ん?もしかして?」と気づきますが、
初診でもせいぜい15分から20分程度のメンタルクリニックが多いため、
本人の訴えたことのみを聞いて「うつですね」「不安障害ですね」と診断して、
ずーっと根本治療は置き去りにされることが多いのです。

しかし、丁寧に時間をさいていても、見逃すことはあります。
まきメンタルクリニックでも、他院から転院して来た方で、
1年以上経って、ようやく気付いた場合も2名ほどいました。

うち1名はあまりにも他の症状が華々しく、
幼少期からの生育歴などは何度か聞いているのに、
本人も「虐待された」ことだけを話すので、気づくのに3年以上かかりました。
「ADHDの専門医に診てもらう」となぜか不貞腐れたように転院されましたが、
転院先の医師から「興味深い症例をありがとうございます」という
診療情報提供書の返書が来たときは、
「ん?この先生にとってはただの興味深い症例なのかな」と
ちょっと悲しくなりました。なんだかなぁって感じです。

根本にADHDが存在していると、治療は難航します。
例えば伸びてきた枝を切っても切っても次々伸びてくるように、
表面だけをなぞっているような治療になってしまうからです。
長い経過を経てようやくこちらが気づくこともあります。

一方自分でADHDじゃないか?と相談に来られる方もさまざまです。
確かに不注意は多いけれど、それはその人の問題であり、
ADHDという疾患が、都合のいい隠れ蓑のようになっている人とか、
グレーゾーンの人もいます。

そもそもアスペルガーやADHD、自閉症、コミュニケーション障害などの
発達の問題にはっきりした垣根があるわけではありません。
どの要素も少しずつ持っている場合も結構あります。

また薬さえ飲めば夢みたいに治るというものでもありません。

診察する側の医師が、まだまだ知識不足のため、
ADHDは診ませんというところの方がまだまだ多いのです。
診たとしても、薬だけ処方して精神療法をしないので、
あまり効果がないというケースもあります。

ADHDに対する認識が広がってくると、モラハラ同様、功罪があります。

もしかして?と気づきになる場合はいいのですが、
我も我もと医師も患者も過剰診断し、不要なお薬を飲む羽目になりかねません。

まきメンタルクリニックでは、内服するかどうかについては
「薬を飲めば夢のように治るわけではないし副作用もあります」とした上で、
期待できる効果やどのような効き方をするのか、個人差なども踏まえて説明し、
最終的には本人に決定してもらうようにしています。

薬価や将来的に利用できる社会資源などもお伝えしています。
ADHDの人は、本来の私の仕事である治療方針などよりも、
薬価に食いつくことが多いです。もちろん高いお薬なのでわかるのですが、
「それは薬局で薬剤師に聞いてください」と言っても、
もう頭はそこに集中しているので、こちらの空気を読まずにガンガン来ます。
気になるともう周りが見えない衝動性やこだわりも強いのが特性です。

また、ADHDの患者さんは、往々にして今何が困っているのか、
どのように困っているのかということをうまく伝えられない傾向にあります。
一見治療と関係のないことを話し始めたり、
おそらく本人は、ダイレクトに伝えようと意気込んで来ているのでしょうが、
いざとなると、結局ものすごくカーブしてあちこちに話が寄り道してしまうので、
診察時間が長引きがちで、その割には言いたいことが言えていないことが多いです。

ですからADHDの患者さんに関して言えば、最初は医療相談で来てもらっています。

小さい頃から兆候はあるものの、大人になって社会に出てから
問題の深刻さが表面化することの多いADHD。
でもADHDの人は発想力が豊かだったり、五感が鋭かったりして、
その特性で困っている部分は工夫し、良い部分を活かして生活すれば、
人生は豊かなものになるのではないでしょうか。

ADHDの有名人(←リンクあり)は結構多いですよね。
なんと私の好きな俳優のウィルスミスもADHDなのですよ。

原文:心療内科医まき@梅田(←リンクあり)

では今日はADHDを公表している深瀬慧率いるSEKAI NO OWARIのDragon Night を贈ります♪

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