ストラテラ(ADHD治療薬)の講演して来ました~in 大坂~
2015/05/01 あとで読む
みなさん、こんばんは。
早いもので4月も今日で最後。最近急に暑くなって着る者に困りますね。
ところで、先週の木曜日、23日に大阪でストラテラの講演会をしてきました。
実は昨年まで、私はADHD(注意欠陥多動障害)については苦手意識が強かったのです。
というのも「片づけられない女たち 」という本が出版されてから
自称ADHDの患者さんが押し寄せた時期があり、たいてい彼女たちはADHDじゃないので
なんだか都合よく「自称ADHD」みたいで拒否感というか、トラウマ的になったのです。
しかし昨年、ほんもののADHDの人が、しかもすでにストラテラを内服している人が
他のクリニックから当院に転院してきたのです。
正直慌てました。だってストラテラについての勉強をきちんとしていなかったので、
勉強していない薬は人さまに処方できないという主義の私にとっては大変なことです。
大慌てでストラテラを出しているイーライリリーのMRさんに連絡をしようとしましたが、
実はイーライリリーの出しているジプレキサに強い不信感と拒否感があり、
イーライリリーを敬遠していた私は、誰が担当なのかもわからない有様で、
明治SeikaファルマのMRさんが機転の利く人で、すぐに担当者に連絡してくれたのです。
こうして私のADHDの治療が始まりました。
まずイーライリリーのMRさんに対しての私の第一声は
「来てしまったものは仕方ないよね~」だったようです。
自分でははっきりと覚えていないのですが・・・。
もちろんADHDの診断基準などについては精神科医なので
一応知ってはいましたが、本格的に治療となると、
大人のADHDは子供の頃に見落とされた人たちが多く、
なかなか診断も難しいと思います。
大人になるとさすがに多動は少なくなりますが、うっかりミスや不注意、
人の話を遮って喋りだしたりという、ちょっとした衝動性などが
症状の中心となってきます。
このADHD、まだ原因がはっきりしないのが現状であり、
脳内のカテコラミンという物質が
関与しているであろうという程度なのです。
言っておきますが、大人になってから急にこの疾患になることはありません。
子供の頃からあった症状が、社会に出ると、仕事上許されなくなったり、
人間関係の構築に非常に悪い影響を及ぼしてしまうため、
憂うつな気分や不安が先に立ち、
こうした「抑うつ気分」や「不安」といった併存疾患のために
見落とされがちとなります。
なかなか抗うつ剤を使ってもよくならないのは、
その根源であるADHDによることもあります。
でもADHDはあくまで「発達の問題」なので、完全に治るということはありません。
慎重に診断してもらい、まずは疾患を受け入れなければ治療は進みません。
私がADHDの患者さんに伝えるのは「完治はない」ということからです。
でもADHDの患者さんが社会で生きにくいのは確かなので、
その生きにくさに対して、一緒に考え、工夫するということです。
私が最初に診た患者さんはなぜか多剤併用でかなり身体的にもしんどかったようです。
処方を整理すると、倦怠感も指のふるえもおさまり、今では立派に就労もされています。
その人が「初給料が出たので」と紅茶好きな私に
美味しい紅茶を持ってきてくださった時は
感動で胸が熱くなりました。
普段はもらい物を嫌がる私もこういう時はありがたく頂きます。
この方にはいろいろな薬が処方されていましたが、ストラテラを主軸に、
エビリファイを少量だけ加えることで処方はすっきりして、
非常に良い結果を得られました。
さらにイーライリリーのスゴイところは、とても使い勝手のいいチェックシートを
無料で配布してくれるところです。
これは患者さんがその時の状態を簡単にチェックでき、
しかも主治医と患者さん用にわけられるよう複写式になっているのです。
こんないい資料を使わない手はありません。
というわけで、最初に診たADHDの患者さんがうまくいくとちょっと自信もつきますね。
そして、今までの苦手意識はかなり薄らぎ、それらしい患者さんが受診されると、
「もしかしてADHDかも?」と思うようになりました。
とは言え、患者さん全員が私の診断を受け入れてはくれるのですが、
内服してくれるわけではありません。
ストラテラというお薬が非常に高価であることもあり、
それを飲みさえすれば劇的に良くなるという保証もないわけですから、
仕方ないのですが・・・。
先日も明らかにADHDの方が受診されたのですが、
いつも人の話をきちんと聞いてるつもりが、いざ作業を始めると、
ミスばかりしてしまい、周りの人に「さっき言ったじゃないの!」とか
「なんで何回言っても間違えるの?!」と言われ続けているようでした。
その人も辛いでしょうが、
周囲の人だってだんだんと苛立つために、言い方もきつくなるようで、
ますます萎縮してしまい、落ち込んでしまうという割と典型的な人でした。
その人は採血した後は、しっかりその部位を圧迫止血しないといけないのに、
筋肉注射の後みたいに揉みだしたので、
「揉んじゃダメだよ。しっかり押さえておいて」と伝えて
採血道具を片づけて診察室に戻ると、なんと揉んでました・・・。
さっき言ったばかりなのに・・・。
思わず私もそう思ってしまうくらいの人でしたが、
自分はうつ病だと思いたいようでした。
確かにうつ状態にはなっていますが、その根源はADHDなので、
丁寧に説明して、納得してもらってから処方箋を出しましたが、
なんと内服してないまま次に来られました。
お薬を出すときに私はきちんと効果も起こりうる副作用も説明していますが、
「ちょっとでも吐き気がすると嫌」とか言われると、
さすがに何もできないのが現状です。
またまた私は30分以上かけて説明し、
「納得してから来てください」とお帰り頂きました。
困っているのはその人であって、私ではないので、
お薬を強制することはできませんが、
少しでもよくなりたいとは思わないのでしょうか?
何度も「納得してからまた来てください」と伝えているのに、
まるで聞いてないようで、
患者「今決めないとダメですか?」
私 「だから納得してからでいいですから」
患者「でも少しでも吐き気があると困るんです」
私 「副作用が全くないとは、こちらも言えませんから、
納得してから来たらいいのでは?」
患者「今決めないとダメなんですか?」
私 「だ~か~ら~、納得してからでいいですから。 (はぁ・・・)」
という無限ループのような会話になってしまって、
まさにADHDの不注意と衝動性を
絵に描いたような人でした。
傍から見ていると笑ってしまうような会話かもしれませんね。
では今日は懐かしいさだまさしの名曲「道化師のソネット」を贈ります。
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