ベルソムラの講演会してきました ~ in 大阪 ~
みなさん、こんばんは。
8月26日にMSDという会社でベルソムラについての社内講演会をして来ました。
私は新薬に対しては非常に慎重派で、
「待ってました!」とばかりに使うことはありません。
新薬が出てもたいてい1年くらいは経過をみています。
私が出したいから出す、というのでは困るからです。
だから新薬が出て、1年以内に使っているこのベルソムラはちょっと例外的です。
今回のベルソムラは昨年11月に上市された新しいタイプの睡眠薬です。
覚醒をつかさどるオレキシンという神経伝達物質を一時的に阻害することで、
睡眠を優位にするという働きのある薬です。
依存性の高いベンゾジアゼピン系の薬剤とは全く異なる作用機序の睡眠薬としては、
今のところ、ロレゼムとベルソムラくらいです。
私自身も不眠症のため、まず私が内服してみて良かったという経験と、
やめにくいベンゾジアゼピン系の薬剤ではないというのが処方の大きな理由です。
このベルソムラ、非常にいいお薬だとは思いますが、なかなか苦戦しているようです。
理由は主に、以下の2つだと思います。
①従来の睡眠薬みたいに「来た来た!」という感じの眠気がすぐには来ないこと。
②効果に非常に個人差が大きいこと。
まきメンタルクリニックでも、ざっくりとした感じだと、
①73%くらいの人が20㎎錠で非常にいい効果がある。
②20%近くが翌日眠気が持越して、15㎎錠に変更したり、
もう少し早めに内服するなどなんらかの調整が必要になってくる。
③7%くらいの人は、翌日眠すぎて脱落する。
だからお薬を出す時に、患者さんにいちいちものすごく説明をしていました。
どんな効果が期待できるか?
副作用として起こりうることはどんなことで、その場合どうしたらいいのか?
あまりに時間がかかるので、ついに専用の「内服のしかた」というプリントを作り、
それを患者さんに手渡して、少し説明の時間が短縮できました。
今までの睡眠薬のような即効性というか、ガツンと眠気が来るという薬ではありません。
その代り、眠れるようになればスムースにやめていけるお薬なのです。
しかし本来こうした薬の説明を丁寧に行うべき立場の医師や薬剤師が
本当にここまで丁寧に説明をしているというのは滅多にありません。
脳神経に影響を与える薬なのだから、丁寧に説明すべきなのですが、
医師は患者さんをさっさと診て、ひとりでも捌いてお金を儲けることに、
薬剤師は調剤料金の加算があるのでジェネリックを勧めることばかりに
なんだか必死になっているのが、今の日本の悲しい現状です。
以前看護師のすゆかさん から睡眠薬について相談されたことがあり、
私は改めて、患者さんというのは間違った思い込みをしていると感じました。
睡眠薬を2倍飲めば2倍眠れると勘違いしている人が非常に多いのです。
1錠で3時間半しか眠れなかったら、2錠で7時間眠れるわけではありません。
冷静に考えればわかることなのですが、そこがわかっていない人が意外に多いのです。
それがベンゾジアゼピン系の薬剤であれば、気をつけなければ
どんどん依存や耐性ができてしまいます。
私もかなりの不眠症なので、眠れない辛さはわかりますが、
だからこそ、これ以上は飲まない方がいいという量を知っているので
患者さんに処方する時にはとても気をつけます。
次の手がなくなるような処方はしてはいけないのです。
厚生労働省からも、睡眠薬・安定剤・抗うつ剤・抗精神病薬は
それぞれ2種類以上処方してはいけないと指導されているのに、
結局精神神経学会のe-ラーニングなるものを必死で受講して、
3剤以上出している精神科医も少なくありません。
指導をした端から、抜け穴を作るやり方も、どうなのかなぁと疑問です。
転院希望される人の中には、正直ここまで薬漬けにされていると、
もうお手上げ状態の人もいたりして、どうしても転院したいと言われると
正直泣きそうになります。他人の処方の後始末をしなければならないのは、
まっさらな状態からやるよりはるかに厳しいからです。
だからこそ、安易な処方をしてほしくはありません。
ベルソムラは確かになかなか使い方が難しい薬ですが、
薬の特性をよく理解して、少し長い目で見てもらうと非常に良い薬剤だと思いますが、
なにしろ、個体差(個人差)が大きいのが難点でしょう。
そのせいか、製薬会社の人も、医師達にうまく使ってもらいたくて必死なのです。
2~3分しか診察しない医師だと、この薬は処方には向かないと思います。
良い薬なのに、残念な感じが拭えませんね。
では今日は終わりゆく夏にお別れをということで
松任谷由美でHello My Friendを贈ります♪
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